2-1. 研究体制と方法
研究は、
筑波大学附属小学校 ICT学び方デザイン研究部(授業デザイン・学級経営)、
研究者チーム(学習理論・デザイン研究)、
企業(㈱内田洋行)(学習者用アプリ開発)
の三者協働体制により進められた。この体制により、授業実践の観点とシステム開発の観点を同時に扱うことが可能となり、学習過程の可視化と支援環境の最適化を往還的に検討する枠組みが形成された。

筑波大学附属小学校
Elementary School Attached to University of Tsukuba

ICT learning
令和5年度より本校では、「違いを編む知性」を基軸とし、GIGAスクール構想下で配備された一人一台端末を、学習活動の効率化を超えた学習観や学び方そのものの転換を実現する媒介として位置づけた。本研究は、デジタル学習基盤活用が学習者の思考過程・相互作用・探究構造にどのように寄与しうるかを、授業実践と学習科学的知見の往還によって検討するものである。
研究は、
筑波大学附属小学校 ICT学び方デザイン研究部(授業デザイン・学級経営)、
研究者チーム(学習理論・デザイン研究)、
企業(㈱内田洋行)(学習者用アプリ開発)
の三者協働体制により進められた。この体制により、授業実践の観点とシステム開発の観点を同時に扱うことが可能となり、学習過程の可視化と支援環境の最適化を往還的に検討する枠組みが形成された。

一年目は、デジタル学習基盤活用により生じる学習者の行動・思考の変容を質的に分析し、学びの構造的特徴として次の4点を抽出した。
これらの知見は、デジタル学習基盤の効果が主として「操作技能」や「情報収集速度」にあるのではなく、学びの構造そのものを再編する契機として作用することを示した。
二年目は、一年目に抽出した学びの構造的特徴を、教科固有の学習活動の中で再検証し、デジタル学習基盤が学習の本質にどのように寄与しうるかを、実践に基づき多角的に明確化した。
教科横断の実践分析から、デジタル学習基盤活用の本質は次の二つの観点で整理できる。
(1)教材としてのデジタル学習基盤
画像・動画・音声・テキスト分析など、デジタル学習基盤そのものが学習の対象や媒介表象として機能し、概念理解や探究の足場となる。国語・算数・理科・外国語等において、教材の多様化とモダリティの拡張が見られた。
(2)コミュニケーションツールとしてのデジタル学習基盤
学習者の思考・資料・結果を即時に共有し、比較・相互評価が可能となることで、認知的相互作用(co-regulation)が促進される。デジタル学習基盤が“思考の交換と再構成”を支える基盤となる点が重要である。
理科の「空気・水・金属のあたたまり方」では、観察・実験データのデジタル共有により、個人の実験結果の違いが可視化され、学習者はそれらを比較しながら現象の背後にある規則性を推論する活動を展開できた。デジタル学習基盤は探究過程を個人から共同体へと開く役割を果たした。
「4×4マス課題」では、学習者がデジタルノート上で条件操作・分類・対称性の着目を行い、さらに他者の解法を参照して自らの考えを更新するという、探索(exploration)と再構成(reconstruction)の往還プロセスが確認された。デジタル学習基盤は数学的活動の可視化と社会化を促進する。
1年生においては、端末操作や投稿の基礎的経験を、保護者・上級生との連携を通じて計画的に保証し、デジタル学習基盤が学級経営と学習の双方において安定した基盤として立ち上がるための環境を整備した。
研究過程において、デジタルスクールノート等のアプリケーションに対し、
処理速度の改善、
画面共有機能の拡充、
「いいね」による相互評価機能、
他者の記録を安全に参照する仕組み、
などの改善が計画された。これにより、デジタル学習基盤は単なる記録装置ではなく、思考共有・相互評価・省察の媒介システムとして機能し得る段階へ移行した。
一年目・二年目を通じて明らかになったのは、デジタル学習基盤活用の核心が「学習の効率化」ではなく、
学習者が互いの思考を可視化し、比較し、編み直すことで生じる“知の生成プロセス”を支える点にあるということである。
すなわち、デジタル学習基盤は
表象の生成、
思考の共有、
相互評価、
推論の再構成、
を一体として支える学びのメタレベルの支援環境である。
今後は、教科特性を考慮した「新しい学び方」のモデル化、学習過程における他者参照と著者性の両立、および生成AIと共存する学習者の道具選択能力の育成を重点課題とする必要がある。