(1)問題意識
- 情報過多や多様な価値観の時代に、子どもが主体的に物事を考えることができているのか。
- 情報共有がたやすくなる中、同一化や画一化が進み、自分らしさや創造性を発揮しにくくなっていないか
- 異質なものを受け入れることができず、柔軟で創造的な思考を失っていないか。
筑波大学附属小学校
Elementary School Attached to University of Tsukuba

Research Theme & Content
研究テーマ
個々の違いを受け入れ
違いを尊重し
編む思考活動をすることで
新たな違いを創造する
美意識をもとに
個や集団のしなやかな
「知性」を育む研究
子どもたちが自他の違いを尊重し、異なる視点やアイディアをもとに「編む」という思考活動をすることで、これまでとは違う新たな価値を創出する「知性」を育みたいと考え、「違いを編む『知性』」というテーマを設定した。
「身体・感覚」、「心情」、「関係」、「論理」、「表現」、「価値」といった視点から「違い」を捉えたり、分析したり、比較検討したりすることを「方法に関する知性」と呼び、各教科・領域の研究部会で具体化に取り組んだ。
一方で、「みえないものをみようとする力」を「目的とする知性」とし、方法に関する知性と目的に関する知性は、往還しながら成長するものと考えた。
「方法に関する知性」は、多様な視点からの思考活動であるため、その原動力として、自分の思いに根差した「問いの生成」が不可欠になる。
その意識で授業に取り組む場合、子どもから意図的に「問い」を引き出し、それらの「問い」を編んで共有したり、共有した「問い」をもとに「方法に関する知性」を働かせたりすることで、また新たな「問い」が生まれるという「問い」の連続や成長が見られるのである。
私たちが育てたい「違いを編む『知性』」は、「違い」を受け入れ、尊重する姿勢が必要である。そのためには、謙虚さ、尊重する心、責任感、信頼感、意欲、正直さ、素直さ、挑戦心といった人間性が大切になる。
下に掲載している「違いを編む『知性』の柱」の土台を形成している人間性は、樹木で言えば根を表している。「違いを編む『知性』」の柱部分を樹木の幹とすると、幹が長く太くなるにつれて、同時に根である人間性も豊かになる。
仮に柱部分だけ成長して土台である根が育たなければ、柱は倒れてしまうことになる。我々が考える「違いを編む『知性』」は人間性に内包され、支えられており、相互依存の関係にあると考えている。
左図の①~③の主体は子どもであり、④の主体は働きかける対象である。④に働きかける子どもたちの心情や思考という内面が①~③の違いとなって現れるという関係になっている。
右図は、「違いを編む学習過程」を示す。各フェーズ(様相)を大きく分けると、「違いを出せること」と「違いを編めること」に分けられる。Ph1からPh2までは「違いを出せるフェーズ」とし、同調するのではなく、自分自身の考えをもてることが大切とした。
Ph1については、子どもたちは、まだ「違い」と認識せずにいろいろな見方や考えとして発表した「多様性」の段階と考えられる。その後、それら「多様性」を解釈したり吟味したりする中で、初めて「違い」として認識するのがPh2の段階である。
Ph3以降は、共通点や関係性、視点の移動や俯瞰などをしながら新しいものを生み出す、「違いを編めるフェーズ」とした。
① 自分と他者との違い
② 自分の中の違い(変容する自分、理性と感情など)
③ 他者同士の違い
④ 資料や教材、活動の違い
本テーマの研究を推進するにあたって、新しく「子ども理解研究部」と「ICT学び方デザイン研究部」を起ち上げ、下のような体制で研究に臨んでいる。
指導法を考える際、重要なのは「ねらい(目的)を達成するための教師のかかわり」という点にある。私たち教師は、子どもの学びを保障するために、多岐にわたる教育的なかかわりをしている。例えば、教材を選定し、教科内容を見出すこと、授業の実際において発問や問い返し、板書を組織化すること、1時間の授業をふり返って単元全体を見直し、修正をすることなどである。ここには、ねらい(目的)に応じ、授業を形作る要素を取捨選択している教師の営みがある。その取捨選択に、教科の専門性も含めた「教師の目」が存在することは確かである。
この一連の営みが、指導法そのものであり、換言すると、「授業デザイン」といえる。これにより、子どもたちは互いに学び合う場を通して新たな価値を創出する「知性」を発揮するのである。 教師の授業デザインには、単に授業を計画する行為以上のものが含まれている。それは、子どもたちの「知性」を引き出し、新たな価値を創造するための戦略的な営みでもある。この営みには、教科の専門性と洞察が詰まっており、授業をデザインするという行為そのものが、教科教育の可能性を広げる新たな挑戦につながる。この挑戦は、子どもたちにとって豊かな学びの場を提供するだけでなく、未来の社会で活躍するための力を育むためにも欠かせない。 本校研究企画部では、これら教師の一連のかかわりを指導法ととらえ、「授業デザイン」と言い表すこととして、以下のように定義した。
共に学ぶ場を通して、子どもが新たな価値を創出するための、教師の授業デザイン
授業において、「教師の目」は重要な要素となる。例えば、授業を展開する中で、子どもの表情や言動を観察し、その意味や背景を理解しようとする場合、教師の目が確かなものであれば、子どもが授業内容をどのように理解しているか、どこまで理解しているかを即座に判断し、必要なサポートを提供することができる。 逆に、子どもの反応を見逃してしまったり、子どもの学びの状況を把握できないままに授業を進行したりすることによって、授業が一方向の情報伝達となってしまうことになる。それは、授業のもつダイナミズムを失うことにつながり、このことは、子どもたちにとって、学びづらい状況となってしまう。
教師の目は、主として、事中に直結するととらえられる。しかし、事前において、教材から教科内容を見出したり、事後において次の授業への改善点を見出したりするなど、そこには教師の専門性の発揮とともに、子どもの学びを支える教師の役割が存在する。「教師の目」は、センサーやアンテナに喩えられる。感知することにより、教師のかかわりとしての手立てが生まれる。教師の「観」に関わるといえるだろう。 では、具体的にどのような「教師の目」があるか。先に挙げた3つの段階に分けて示す。
①事前
②事中
②事後
上の内容の1つ1つは、新しいものではないかもしれないが、今回の指導法の研究は、教師が事前、事中、事後において、子どもたちの違いを捉え、これまで有効であった授業技術等をいかに組み合わせ、いかに子どもたちに違いを編ませるかを考え、「みえないものを見ようとする力」を育む指導法を考えている。
3年次の研究は、指導法に活かす評価の研究である。違いを編む思考活動をするためには、「子どもが子どもを見る目」が大切と考えた。子どもは、自分とは異なる思いや願い、考えをどのように捉え、どのように取り込み活かそうとするのか。
発信する前の受信の研究であり、野球に例えればピッチャーが投げるボールをいかにキャッチするか“名キャッチャー”を育てる研究と喩えた。
校内研究会として、年間7本の授業研究会を行い、実践をもとに検証するスタイルで研究を続けている。
今年の6月に本研究最後の発表を行いますので、
どうぞよろしくお願い申し上げます。